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2009.05.25

■口にしなくてもわかること

ジュノからレンタルした黄色いチョコボが2羽、パシュハウ沼を駆け抜けていきます。
俺とリサさんのチョコボです。

「どうです、最近の調子は」

俺は手綱を取ったまま振り向き、
同じくして後ろを走っていたリサさんに尋ねました。

「ええっと、お金が・・・かかります^^;」

彼女の素直で現実的な答えに、思わず苦笑いしてしまったものです。
 

ようやく目的地のベドーが見えてきました。

ああ、なぜ二人でベドーに向かっているのかって?

『残りはベドー?だけみたいです^^』
リサさんのその一言が決め手で、
彼女のミッションを手伝うことになったからなのです。
“魔晶石をさがせ”のミッション。彼女が飛空挺に乗れるのも目前です。

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見上げたベドーの空は、相変わらずの曇り空。
天気が良いことのほうが少ないように思えます。
 
 
さて。
とりあえずミッションで必要なアイテムを落とすNMを倒さなくてはなりません。
 
 
「初めて来ました」
 
ベドーに着いたリサさんは、物珍しそうに
辺りに広がるベドーの風景を見回しています。
 
 
 
ここ(入り口)で待ってて。すぐNMを倒してくるから。
 
そんな風に言ってあげるのが、きっと親切な冒険者なのかもしれません。
 
 
でも、俺は意地悪なのでそんな風には言いたくない。
 
 
ほら。俺が1人でNMを倒してしまうと、
入り口で待っているだけの彼女は、きっとつまんないでしょ?
 
少し危ないかもしれないけれど、
一緒にファイナルファンタジーの冒険を楽しみたいでしょう?
 
 
 
「折角なので、NMを一緒に倒しましょう
  
 
って、口をついて言ってしまった後、大抵いつも後悔するんです。
 
勝手だったかなあ、って。
 
 
「はい^^」
 
 
・・・そうして
救われます。嬉しそうに返事をくれる人に。
 
 
「少し奥に進まなければならないけれど・・・大丈夫?」
 
「はい^^」
 
 
新しい冒険を目の前にして、心なしか嬉しそうに
くるくる走り回る彼女の軽い足取りが、
俺の気持ちも軽く舞い上げてくれます。
 

そうそう、忘れていました。
 
ベドーには
近づけばひどい“呪い”にかけられてしまう装置が幾つも設置してあります。
侵入者を阻むためでしょうか。
  
呪いにならないようにするためには、別の装置を起動させて、
自らを静寂状態に保っておかなくてはなりません。
 
とは言っても、レベルの高い俺に反して、
リサさんのレベルはまだ40にも満ていないのです。
からまれると危ないよね。
 
俺は彼女にスニークの魔法を唱えます。
 
ええ、今日の俺はサポ白で来ましたし、
常備薬のやまびこ薬も忘れずカバンに持ってきていました。
 
 
静寂を受ける装置のスイッチをリサさんと二人で押した後、
俺はリサさんに一つだけお願いをしました。
 
 
「スニークがきれそうになったら、言ってくださいね」
 
 
 
 
「はい」
 
返事が少し遅れて返ってきます。
 
 
ちょっぴり緊張されているのかもしれません。
 
 
「大丈夫。もしもからまれてしまっても倒せば良いから^^」
 
「はい^^」
 
 
 
 
大丈夫かな?
 
彼女がちゃんと後ろをついてきているかな?
 
 
幾度も振り返りながら、少しずつ奥へ奥へと進みます。
 
 
 
・・・リサのスニークの効果が切れた・・・
 
俺のモニタにログが流れます。
 
 
おや、切れてしまったか。
 
その場でリサさんにスニークを唱えようとした刹那、
彼女が慌てた様子で口を開きました。
 
「きれました」
 
 
「うん」
 
 
一生懸命に報告してくれた彼女にスニークを唱えます。
 
 
彼女はスニークの効果がかかるとホッとした様子で、
俺に向かって深々とお辞儀をしてくださいました。
 
「ありがとうです^^」
 
いえいえ。
 
 
 
『 “ 効果がきれそうだ ” のログが出たら
 すかさず報告して、自分でその効果をきる・・・』
 
今の俺にとってはもうすっかり手馴れた当たり前の作業ですが、
彼女・・・、ええ、初めてする人にとっては、ややこしくて難しい作業です。
 
だから、一生懸命こちらに報告してくれる彼女を目にしていると、
自然とありがたい気持ちになってしまうってものです。
 
 
 
俺たちはベドーの奥に向かって、一歩一歩踏みしめて進んでいきます。
 
少しずつ、本当に少しずつだけれど
確実に。
 
 
 
・・・リサのスニークの効果が切れた・・・
 
 
「きれまし」
 
「た」

 
たどたどしく、律儀に報告してくれる彼女に、スニークを唱えながら。
 
ふふ。そんなに焦らなくても。
  
 
 
ふと気づきましたが、俺たちはほとんど会話を交わしていませんでした。
 
 
ええ、リサさんも、俺も、すっかり無口になっていました。
 
 
うん。きっとお互いに集中していたのです。
 
 
たしかに会話は消えてしまったけれど、
俺には色々なことが沢山伝わってきていました。
 
 
後ろを振り向けば、ぴったりとなぞるようにして、
一生懸命についてきている彼女が映ります。
 
俺が「からまれても大丈夫」なんて口にしてしまったものだから、
彼女はきっとその最悪の事態は避けるべく、一生懸命なのです。
 
そうして、「報告してくださいね」と言った、
ただ一つの俺との約束を、頑張って守ってくれているのです。
 
 
まるで俺の影踏みでもしているような彼女の動きが、
いじらしく思えて、ふっと笑いがこぼれそうになります。
  
 
以前、向き合った言葉を伝えたいという話をしたことがありました。
でもね。それとは正反対のことだってあるのだと思います。
 
 

言葉がなくたって、口にしなくたって
“ チャット ”になおさなくったって
 
わかる時もあるよ。

伝わってくることもあるんだよ。
 
 

「きれそうな赤い字ですっ」
 
それなら二人で、ここで少し立ち止まりましょう。


効果がきれたら新しいスニークを唱えます。


もう少し先まで、頑張ろうね。


新しいスニークがかかるたび
こちらに向かって丁寧なお辞儀をしてくれる彼女に、
俺も心の中で微笑むのでした。

 
 

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